不慮の死を迎えた夫が、妻のもとに戻ってくる映画ということで、アラン・リックマンが幽霊となって戻ってくる「愛しい人が眠るまで」みたいな感じかと思っていたら、嬉しくも予想を裏切られた。
あのゴーストは地縛霊ということになるんだろうか。執着を持ってしまった場所からは離れられないようだ。
だが、時の流れは方向を失う。肉体を持っていた時のようにはっきりとした意識はなく、ふと気づくと過去や未来の時の中にいる。一瞬、戸惑うが受け入れるしかない。
ゴーストは時の中を彷徨い、生前この家に感じていた不思議な感覚の意味を理解する。
タイムトラベル的な要素がある映画の、時の重複する感じ(時間の作る円の中に閉じ込められるような閉塞感)が苦手なので、この映画のエンドレス感がどうも居心地悪い。ポルダーガイスト現象をゴースト側の気持ちに寄り添ってみるのは新鮮だった。
シーツお化けなので、布の作るヒダが唯一の表情になる。使った繊維はシーンで使い分けたかもしれない。布の端をツンツンと引っ張ったりしてシーツの落ち感やヒダの陰影を整えるのだ。
孤独な傍観者であることを強調するような2つの穴の位置も絶妙で、どこか愛嬌のあるゴーストになっていた。
2017 A Ghost Story アメリカ